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クリニックを建てたいあなたへ――建築士選びで迷わないための大切なお話

クリニックを建てたいあなたへ――建築士選びで迷わないための大切なお話

「子どもたちが安心して通える小児科を開きたい」
「患者さんが不安なく話せる、温かい雰囲気の心療内科をつくりたい」
「地域に根ざした、ずっと愛されるクリニックを開業したい」

そんな想いを胸に、これからクリニック開業を目指しているあなたへ。

開業の準備は、正直言って簡単ではありません。
土地探し、資金計画、医療機器の選定、スタッフの確保……。
やるべきことは山積みです。

その中でも特に大きな決断となるのが、「誰に建物をつくってもらうか」――つまり、建築士選びではないでしょうか。

今日は、これからクリニックを開業したいと考えている方に向けて、建築士を探すときに大切にしてほしいことを、実際の現場を見てきた私の目線からお話しさせていただきます。

建築士は「設計士」である前に、「理解者」であるべき

クリニックの建築は、他の建物――たとえば住宅やカフェ、商業施設などとは、まったく違う要素を持っています。

ただ単に「見た目がきれいな建物」では意味がありません。

● スムーズな診療を支える導線設計
● プライバシーに配慮した間取り
● 小さなお子様やご高齢の方にも優しいバリアフリー
● 医療機器の配置や、換気・電気容量の計算
● 地域性や、将来の増改築も見据えた柔軟性ある設計

これらすべてを考慮しながら、一つひとつのクリニックの「顔」をつくっていくのが、クリニック専門の建築士の仕事です。

設計図を引くだけが建築士の仕事ではありません。

そこに来る患者様の表情や、スタッフの働きやすさ、院長先生の想い――
それらをしっかりと“受け取って”、かたちにする。

だからこそ、クリニックを建てる建築士には「専門知識」と同じくらい、「人の気持ちを想像する力」が求められるのです。

 

設計が違えば、診療スタイルも変わる

私が過去に携わった心療内科のプロジェクトでは、院長先生がこう言っていました。

「患者さんの中には、なるべく人に会わずに来院したいという方もいます。
そういう方のために、裏口から直接診察室に入れるような動線があれば、安心して通えると思うんです」

――私はその言葉を受けて、正面とは別に、控えめな裏動線を設けました。
結果として、院長先生の元には、これまでなかなか相談できなかったような患者さんも訪れるようになったといいます。

これは「設計」が変わったことで、「診療スタイル」や「クリニックの可能性」まで変化した一例です。

建築とは、空間をつくることですが、
同時に「人の暮らし方」「働き方」や「関係性」までもデザインするものだと、私は感じています。

だからこそ、建築士選びは、クリニックの未来そのものを選ぶことでもあるのです。

建築士を選ぶときに大切なこと

では、実際に建築士を探すときに、どんなポイントに注目すれば良いのでしょうか?
以下に、私自身が大切にしている観点を、皆さまにも共有させていただきます。

① 医療建築の実績があるかどうか

これが何より大切です。
商業施設や住宅の経験は豊富でも、医療施設となるとまったく勝手が違います。

● 医療法・建築基準法などの法規制
● 医療機器の設置に関する知識
● 保健所への事前相談対応 など

こうした知識と経験がなければ、あとで「こんなはずじゃなかった」ということになりかねません。
過去にどんなクリニックを手がけてきたか、丁寧に聞いてみてください。

② 話をよく聴いてくれる人か

建築士の中には、非常に優れたセンスや技術を持っている人も多いです。
ただ、設計の良し悪しは、それだけでは決まりません。

あなたの話を丁寧に聴いて、理想のクリニック像を共有してくれるか。
無理な提案を押しつけず、現実的なアドバイスをしてくれるか。

「この人なら信頼できる」と思えるかどうかを、大切にしてください。

③ チームワークの中にいる建築士か

クリニックづくりには、建築士だけでなく、施工会社、医療機器業者、行政機関など多くの専門家が関わります。

チーム全体を見ながら、スムーズに調整を進めてくれる建築士であることが、結果としてあなたの負担を軽減し、安心につながります。

 

建物ができる前から、物語は始まっている

クリニックの完成は、ゴールではありません。

むしろ、そこからが本当のスタートです。

何年もかけて、地域の人々と信頼関係を築いていく。
通ってくれる患者様が、少しずつ増えていく。
「ここに来るとホッとする」
「先生がいてくれてよかった」――
そう言ってもらえるような、かけがえのない場所に育っていく。

私たち建築士がつくるのは、そうした未来の「舞台装置」です。

そして、それはただの“箱”ではなく、
あなたの「想い」を受け取って、「かたち」にする――
共に歩むパートナーでありたいと、心から願っています。

 

クリニック開業は、人生の大きな挑戦です。
だからこそ、「誰と一緒に進めるか」は、何よりも重要な選択です。

建築士は、建物をつくる人でありながら、あなたの夢を支える人でもあります。
一人で悩まず、想いを共有できる建築士と出会ってください。

私たちも、その一人として、いつでもあなたのそばにいます。

あなたのクリニックが、地域にとっての「心のよりどころ」になりますように。